冷えを解消し、免疫力アップ~藁科充

からだを冷やさないために

冷えの解消でがんになりにくい体質に

現代人は、からだを冷やす生活にどっぷりとつかっています。冬でもアイスクリームやジュースを飲み、冷やしたすいかやメロンを食べ、女性はミニスカート姿。夏は、冷房の効いた部屋で仕事をし、「暑い暑い」と言ってビールを飲みます。運動不足が加わり、からだが冷えるのは当然です。現代人は、肩こりや自律神経失調症、アレルギーがあたり前のようになっていますが、原因は冷えにあると指摘する医師も増えてきました。

がん細胞は熱に弱い

がんも同じです。がん細胞は熱に弱いといわれています。国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)では、人間の子宮がん細胞を取り出し、32~43度の間で温度変化を与えて、正常細胞との比較をする実験を行いました。その結果、39・6度以上の温度になると、がん細胞は10日ほどで全滅したが、正常細胞にはまったくダメージがなかったと報告をしています。からだを冷やすことが、がん細胞にとってすみやすい環境を作っているのです。

体温は36.5度が理想

せめて、体温を36・5度くらいに保てるように対策を練るべきです。湯たんぽを使ったり、食べ物に気をつけたり、ちょっとした工夫でがんに強いからだを作ることができます。

冷えが進むと免疫力の低下を招く

人間の体温は、体内酵素がもっともよくはたらく36・5度が最適だといわれ、からだ全体がもっとも活性化します。ところが、現代人の多くが36・0度前後しかありません。手先や足が冷えて眠れないという冷え性の人が増えているのです。

冷え性の割合

冷え性は、やはり女性に多く、夏でも半数近くが冷えを感じているという調査結果があります。とくに、若い女性に多く、20歳代で54・6%、30歳代で61・1%の人が冷えに悩んでいました。からだが冷えているという自覚症状のある男性は12・0%です。女性ほどではないにしても、10人に1人以上が、足が冷えて眠れないなどの冷えを自覚しているのです。

冷えた体は悪循環のもと

からだが冷えれば、筋肉は硬くなります。硬くなった筋肉は、血管を圧迫して血流を悪化させます。血流が悪いと、末梢の血管まで血液が届かなくなりますから、手先や足先がさらに冷えてしまい、悪循環が作られてしまうのです。

免疫力の低下

冷えは、肩がこる、頭が痛い、からだがだるいなどの不快な症状を発生させます。さらに進むと、免疫力が低下して、極端な場合には、がんという怖い病気を招く可能性を増大させます。

体温が36度以下になると、血流が悪くなり、自律神経のバランスが崩れてきます。細胞の新陳代謝も悪くなり、がん細胞にとっては、とてもすみやすい環境になるのです。

体温が低いからだは、がんにとっては、とてもすみやすい環境なのです。

からだを温める食べ物、生活・習慣
冷え性を判断するには

冷え性を自覚している人は多いですが、実は「自分は暑がり」という人のなかにも、結構、冷え性が多いようです。からだが冷えているかどうかは手足ではなく、温かい手でおなかを触ってみたほうが的確で、冷たい人は冷え性の可能性が大きいです。

冷えの程度が強い人ほど、冷えに気がつかないことが多いようです。とくに、がん患者のなかには、芯まで冷えきっているのに、寒さをまったく感じていない人も少なくありません。手足の冷えはもちろん、冷えを感じていなくても、肩こりや頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れなどのある人は、冷え性だと判断していいようです。

冷え性の改善方法

では、がんを予防、治療するため、どうやって冷え性を改善し、からだを温めればいいのでしょうか。からだを冷やしている原因はたくさんあります。食べ物、生活・習慣、ストレスなどが主なもので、一つひとつ改善していく必要があります。

食べ物にかんしては、冷えたものは食べないようにすることが大切です。アイスクリームやジュースなどは添加物の問題もあり、あまりとらないほうがいいでしょう。

生野菜食に取り組んでいる人は、冷蔵庫で冷やしたものではなく、自然の温度のものを食べることを心がけたほうがいいでしょう。水も同じで、常温のものを飲むようにします。

半身浴、手浴、足浴で血流をよくする

生活・習慣では、風呂が重要です。シャワーですませる人が増えていますが、きちんと湯船につかることが大切です。からだを温めればいいというので、熱い湯に我慢して入るのは逆効果です。42度以上の熱い湯に入ると、交感神経が優位になり、血管が収縮して血圧が上がり、からだに負担がかかります。交感神経が優位になれば、免疫力が下がることもわかっています。

38~41度くらいのぬるめの湯

いちばんいいのは、副交感神経がはたらき、血管が拡張して血流がよくなり、免疫力もアップする、38~41度くらいのぬるめの湯です。

半身浴も効果的

半身浴も効果的です。みぞおちから下だけを湯につけて入浴します。腰から下の血流をよくして、腎臓機能を活性化します。30分ほどの半身浴で発汗が促進され、全身がぽかぽかと温まります。

女性につらい冷え性 眠ってしまうと足先温度は上昇(1994年)

女性にはつらい冷え性。原因は不明で、医学的には病名を特定できない体の不調をさす「不定愁訴」とされる。共立女子大の芳住邦雄教授(被服環境学)らのグループは三年前から、理想的な睡眠環境という観点で冷え性とその対策の研究に取り組んでいる。

 今年、共立女子大大学院を卒業した会田さん(家政学研究科被服学専攻)は研究室の後輩と共同で、東京都内の女子中学生、女子高校生各百三十人と、同女子大の学生三百八十人を対象に、女性の冷え性について世代間の違いをアンケートした。

 その結果、冷え性自覚者は中学生では全体の二分の一だったが、高校生では三分の二、大学生では四分の三と年代順に増加していた。

 「自分も中学生のころはあまり気にしなかったが、大学生になって冷え性と感じた。冷え性は女性の成熟にも関係する現象ではないか」と会田さん。芳住教授も「四十代、五十代に調査対象を広げ、世代間での差を明らかにして対策を練りたい」と話す。

 会田さんらは、冷え性の実態を調べるため、寝た時の体表温度の変化を測定した=写真。温度、湿度を一定に保てる人工気候室にベッドと綿の掛け布団を準備、木綿のパジャマを着せ、額、背中、足など十二カ所に温度計を着け、十秒ごとに記録した。

 冷え性でない人は、布団に入って十分後に全身の温度が三五度前後で一定になった。しかし、冷え性の人の足先温度は三〇度のまま。眠ってしまった三十五分後から上昇し、六十分後には普通の人と同じ三五度になった。芳住教授は「眠ると余分な緊張が解け、体が自然な状態に戻るのでは」と推論する。

 冷え性は末梢(まっしょう)血管の血流が悪くなって起こるが、その原因はホルモン分泌量の変化や自律神経の失調などはっきりしない。産婦人科医らの間でも、意見は分かれている。睡眠環境からの冷え性研究が、原因究明の新たなアプローチになるかも。